大好きなファンタジー作品紹介①【キーリ】
わたしは物語が好きです。読むのも、作るのも。
好きなジャンルはファンタジー。
これから何作か、わたしが大好きな、惹かれた、感動した・・・そんな素敵なファンタジー作品を紹介していこうと思います。
今回紹介するのはライトノベルです。
【キーリ 死者たちは荒野に眠る】壁井ユカコ / イラスト:田上俊介
こちらは電撃文庫さんから出ているライトノベルです。もう15年も前の本ですが、今でもわたしが本棚の1番上に並べ、定期的に読み返している作品です。そして壁井ユカコ先生は、わたしが最も尊敬する作家さんです。
わたしがこの作品を読んで思ったことはふたつ。
・全世界の人間がこの小説を読んだら世界から戦争が消える。
・こんなふうに感動的な物語を作る人になりたい。
ちなみに今年、キーリ合同誌企画『15年目の植民祭』に「てのひら」という小説で参加させていただいております。キーリファンの愛がずっしり詰まった250ページフルカラーの分厚い本です。
さて、そろそろ作品の紹介に移りますね!
主人公は霊感の強い女の子、キーリ。
幽霊が視えてしまうことで学校でも少々浮いている彼女が出会ったのは、かつて不老不死の兵士として戦争に参加していた【不死人】のハーヴェイ。
ハーヴェイは戦死した兵長の霊が憑依したラジオを、彼の墓へ届けるために旅をしていた。キーリは自分と同じように霊が視える相手と出会えた喜びから、学校の長期休暇を利用して彼らの旅についていく。
霊感少女と、不死人の青年と、ラジオの憑依霊、3人の旅・・・。
戦後を舞台にしたこの作品の、歴史的背景、訪れる街の様子、そして様々な立場の人間の心理描写が、とても独創的でリアルで繊細です。そしてキャラクターが本当に魅力的。
あとは、純粋に文章が好きですね。
壁井ユカコ先生の文章は、すこし特徴的です。一文が長いんです。句読点が少ない。でも、
―何が奇跡かって、今回の無茶苦茶な騒動の中でラジオの部品が一つも欠けなかったことこそが最大の奇跡ではないかと思わないでもない。―※キーリⅡ砂の上の白い航跡より引用
ただ長いだけでなく、表現の仕方や言葉選びが秀逸でおもしろく、テンポも良いので、読んでいてまったく退屈する場面がないのです。文章のひとつひとつが芸術作品なんです。
そして、わたしが心臓を締め付けられたシーン(他にもたくさんありますが)が下記になります。戦時中、校庭に落ちた大砲の流れ弾で友人を失った少年の心理描写です。
―外は静かだった。エリシャの声も、校庭で遊んでいた年少組の声もぷつりと途絶えて、まるで単に給食の時間だから誰もいないだけみたいな、あと五分もしたら早食いの悪ガキどもがわあと歓声をあげて飛びだしてきそうな、そんな日常的な静けさだった。そうであって欲しいと思った。―※キーリⅥはじまりの白日の庭(下)より引用
戦争による犠牲者の悲しみや痛みをこんなふうに心の芯に訴えかけてくる小説を、文章を、わたしは未だかつて読んだことがありません。
平和な時代に生きていられるわたしたちが、決して忘れてはいけない戦争の犠牲や、生きること、死ぬことについて考えさせられる物語です。
わたしもいつか戦争をテーマにした物語を作ろうと思っています。とても難しいテーマですが、いつか。
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